普通預金の既経過利息と相続税評価

金利上昇下で「未払利息計算書」をどこまで取得すべきか
作成日:2026年6月24日

はじめに:未払利息計算書(既経過利息計算書)とは

「未払利息計算書」「未払リスク計算書」などと呼ばれる書類は、一般には金融機関が発行する既経過利息計算書(経過利息計算書・未収利息証明書)を指します。

これは、相続開始日(課税時期)にその預金を解約したと仮定した場合に支払われる既経過利子の額を、金融機関が計算して証明する書類です。相続税の財産評価では、預貯金は次の式で評価する必要があるため、この既経過利子の額を確定させる資料として使われます。財産評価基本通達203 本文

預貯金の評価額 = 課税時期の預入高 +(既経過利子の額 - 源泉徴収される税相当額)

残高証明書に既経過利息が併記される金融機関もありますが、定期預金等は別途この計算書の発行を依頼するのが一般的です。

通達の構造と「少額なもの」

財産評価基本通達203は、預貯金の評価について本文とただし書きで取扱いを分けています。

「少額」の判断基準

「少額」に明確な金額基準(◯◯円以上など)は定められておらず、社会通念や課税上の弊害の有無による総合判断と解されています。実務上、普通預金等は金額の大小を問わず預入高のみで評価する運用が広く行われています。

既経過利子から控除する税は20.315%

個人の預貯金利子は源泉分離課税で、受け取る前に次の合計20.315%が天引きされます。

所得税 15% + 復興特別所得税 0.315% + 住民税利子割 5% = 20.315%

受取人が現実に手にできるのは天引き後の手取り額であるため、加算する既経過利子も20.315%控除後の額で評価するのが実務上の取扱いです。財産評価基本通達203 本文

住民税利子割は、法人については平成28年(2016年)に廃止されましたが、個人については存続しています。被相続人は個人であるため、個人の預貯金利子は20.315%が天引きされる点に注意が必要です。なお2038年以降は復興特別所得税が廃止予定のため、その後の税率は20%(所得税15%+住民税利子割5%)となる見込みです。

近年の普通預金金利の動き

長くほぼゼロ(大手行で年0.001%程度)が続いていましたが、日本銀行のマイナス金利解除以降、段階的に上昇しています。

数値は大手行の普通預金金利の目安です。

金利が上がっても利息はどの程度か(概算)

年0.30%・税引後(×0.79685)で試算した、1年あたりの普通預金利息の概算は次のとおりです。普通預金の利息は年2回付与のため、既経過利子は最大でも約半年分にとどまります。

残高年間の税引後利息(概算)「少額」の目安
100万円約 2,390円少額の範囲
1,000万円約 23,900円少額の範囲
5,000万円約 119,500円慎重に判断
1億円約 239,000円少額と言いにくい

数百万~1,000万円規模であれば、金利が0.30%・0.40%へ上がっても既経過利子は数千円~1万円台にとどまります。

普通預金と定期預金で取扱いが異なる

少額なら省略可

普通預金など(定期等以外)

既経過利子が少額であれば、預入高のみで評価してよい(既経過利息の加算を省略できる)。203 ただし書き

金額にかかわらず必要

定期預金・定期郵便貯金・定額郵便貯金

ただし書きの対象外。金額の大小にかかわらず既経過利子の加算が必要で、「少額だから不要」は適用できない。203 本文

結論

普通預金など(定期等以外) 金利が上がってきているとはいえ、通常規模であれば既経過利子は「少額なもの」の範囲に収まります。引き続き既経過利息計算書の取得は不要とし、預入高のみで評価して差し支えないと考えられます。203 ただし書き
定期預金・定期郵便貯金・定額郵便貯金 利息の多寡にかかわらず既経過利子の加算が必要です。計算書の取得は「念のため」ではなく、正確な評価のために原則必要な手続きと位置づけられます。203 本文

「普通預金=常に少額で不要」と機械的に当てはめるのではなく、残高が数千万円~億単位になると既経過利子が数万円~十数万円規模となり「少額」と言いにくくなる場合があるため、その際は普通預金についても個別に取得・加算を検討するのが安全です。

本ページは一般的な税務上の考え方を解説したものであり、特定の個人・法人・案件に関する助言ではありません。相続税の評価は前提となる事実関係により結論が変わり得ます。実際の適用にあたっては、根拠条文・通達をご確認のうえ、個別事情に即した検討を行ってください。